医療機関と労働災害時の仕組み

労災保険給付によって行われる医療行為は「労災医療」と言われる

療養補償給付」とは労災保険の1つで、これによって行われる医療行為の総称を、「労災医療」といいます。
労働者が業務中の災害や、通勤時の負傷、疾病にかかって療養する場合などには、この療養補償給付が給付されます。傷病を少しでも早く治し、可能な限り後遺症を残さないように、効果的な治療方法を実施することで、労働者の早期復帰を促しています。

政府が定めた労災保険指定医療機関とは?

政府は、労働者に対して療養給付を代行する医療機関として、労災病院や指定医療機関を定めています。このことを「労災保険指定医療機関制度」と言います。
労働者がこれらの医療機関を受診し療養を受けた場合、医療機関から労働局長に治療費の請求を直接行うことができるようになります。これにより、労働者は費用負担を感じることなく治療に集中できる仕組みになっており、かつ医療機関は、公的な医療制度である「労災医療」を統一して運営することができます。
また、労災病院と指定医療機関に支払われている労災保険の療養(補償)給付は、約93%にのぼると言われています。

労働者の診察で指定医療機関が取り扱う範囲について

業務災害や通勤災害が原因の負傷・疾病について、指定医療機関が扱う治療範囲は以下のとおりです。

療養の給付

・診察
・薬剤又は治療材料の支給
・処置や手術、その他の治療
・居宅における療養上の管理、またはその療養に伴う世話、その他の看護
・病院や診療所への入院及びその療養に伴う世話、その他の看護

アフターケア

・診察
・保健指導
・保健のための処置
・理学療法
・注射
・検査
・精神療法、カウンセリング等
・保健のための薬剤支給

外科後処置

・診察
・薬剤又は治療材料の支給
・処置や手術、その他の治療
・病院や診療所への入院及びその療養に伴う世話、その他の看護
・節電電動義手を装着し、かつその訓練等

これらの治療は、原則として傷病が治癒(症状固定)するまで無償で行われます。

労災指定病院で治療を受ける時の手続方法

労災病院や指定医療機関等で療養を受けるためには、病院等を経由して、労働基準監督署長に書類を提出しなければなりません。
提出書類は、災害発生時の状況によって異なります。

・労働災害の場合:「療養補償給付たる 療養の給付請求書」(様式第7号)
・通勤災害の場合:「療養給付たる療養の給付請求書」(様式第16号の5)

これらは、厚生労働省のホームページからもダウンロードすることができます。いずれも、必要事項を記載して提出して下さい。

労災指定病院以外で治療を受ける時の手続方法

労災が発生した場合、原則は「治療」という「現物給付」です。しかし、自宅周辺に労災病院や指定医療機関が無い場合などは、現物給付を受けることは困難です。このような場合は、指定医療機関以外を受診し、保険給付を受ける「現金給付制度」を利用しましょう。これは、労働者自身で一時的に治療費を負担し、後日、労働基準監督署から金銭を受け取るといった制度です。ただし、治療内容によって、申請時に提出する書類が異なるため、ご注意下さい。

1)治療を受けた場合や、ギプスなどの器具を装着した場合
・療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号1、82ページ)
支払った費用の領収書の添付が必要です。

2)投薬を受けた場合
・療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号2、84ページ)
費用の明細書、看護や移送された場合には請求書または領収書の添付が必要です。

3)整骨院で施術を受けた場合
・療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号3)
マッサージの場合は、医師の診断書の添付が必要です。初回請求時と、初めて施術を受けた日から6ヶ月以内の請求時とで、別々の診断書になります。6ヶ月を経過した以降は、3ヶ月毎の請求時に医師の診断書を添付します。

4)あんま治療、はり・きゅう治療を受けた場合
・療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号4)
施術を受けた場合、初めて施術を受けた日から9カ月以内の請求時に、①はり師・きゅう師の意見書、②症状の経過表、③医師の診断書④医師の意見書を添付します。

5)訪問看護の場合
・療養補償給付たる療蓑の費用請求書(様式第7号5)

これらは原則として、診察を受けた医師または歯科医師から証明を受けなければなりません。領収書は原本が必要です。
また、マッサージやはり・きゅうが給付の対象となるためには、医師が必要と判断した場合のみとなります。