- 傷病: 右上腕骨大結節骨挫傷、右肩関節脱臼、反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)
- 部位: 右肩、右上腕部
- 後遺障害等級: 7級3号
- 最終示談金額: 2000万円獲得
事故内容と障害内容
ご依頼者様は、工場での構内作業中に、冷蔵庫から扉を開けて冷凍庫に商品を取りに行った際、凍結した床面に足を滑らせ、バランスを崩して転倒し負傷されました。転倒時に、手押し台車で身体を支えようとしたため右肩を負傷し、右上腕骨大結節骨挫傷、右肩関節脱臼、反射性交感神経性ジストロフィー(CRPS)等の傷病を負っております。
ご依頼の経緯
初回のご相談時より、右肩から右上腕部にかけての激しい痛みと右肩関節の機能障害(右肩が挙上できない)を訴えられており、肩をさする程度の軽い接触であっても激痛(アロディニア)が生じる状態でした。また、右肩の痛みが特に酷いときは、手のしびれ感まで発生し、歯磨き中にも痛みが増悪し続け、調理中に野菜や肉が切れなくなってしまうなど、子供を養育する母としても日常生活に甚大な支障を感じておられました。
ドライヤーさえ満足にあてられなくなったことから、長い髪を切らざるを得ず、生涯このような症状に悩まされ続け、仕事も退職しなければならないという不安から、後遺障害の申請手続きや会社への損害賠償請求を行いたいとのご要望があり、当事務所へご依頼いただくこととなりました。
弁護活動
ご依頼者様は、「反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)」という傷病名を負っており、これは複合性局所疼痛症候群Ⅰ型(CRPS)へと統一され、後遺障害の認定要件が明らかとなっております。
複合性局所疼痛症候群Ⅰ型(CRPS)の労災保険における後遺障害の認定要件を概略すると、次のとおりとされております。
- 骨萎縮
- 関節の拘縮(可動域制限)
- 皮膚の異常(皮膚温の異常、腫脹、浮腫等の損害)
CRPSでは、上記の3つの要件をしっかりと立証することが重要となります。病院の診察や検査では、上記3つの要件の検査がされていなかったり、後遺障害診断書(労働者災害補償保険診断書)に記載がされていないということがよくあります。
また、複合性局所疼痛症候群Ⅰ型(CRPS)は、アロディニアと言われる強い疼痛を伴うことがその特徴とされており、後遺障害等級では、その症状の程度によって第7級、第9級、第12級または第14級の認定を行うとされております。
医師に作成いただいた診断書を弁護士法人アジア総合法律事務所で分析したところ、骨委縮と関節の拘縮(可動域制限)についての記載はありましたが、受診医療機関では皮膚温の異常を検査するためのサーモグラフィーの検査が実施されていませんでした。
調査をしたところ、受診医療機関では、サーモグラフィー検査が実施できないことが判明しましたので、紹介状をもらい検査ができる医療機関の受診を勧めたことで、健側(左肩)と比較して患側(右肩)の皮膚温が1度高くなっていることが確認できました。
労働基準監督署に対する後遺障害の申請においては、以上のCRPSの3つの要件(骨委縮、関節の拘縮、皮膚の異常)を満たしていること、右上腕の腫脹が持続していることや、ブロック注射、リハビリなどといったこれまでの治療経緯も踏まえた意見書を作成し、労働基準監督署への障害補償給付支給請求(後遺障害の申請)を行いました。
結果
後遺障害の認定要件の立証に成功したことで、労働基準監督署からも、他覚的所見だけでなく、療養内容や自訴等も勘案したうえで、今後も持続する傷病であることが認められました。
そして、反射性交感神経ジストロフィーについて、3つの要件を満たしていること、右肩の可動域が1/2に制限されていること、これが痛みによる拘縮であること等が認められ、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として、障害等級第7級3号の認定を得ることに成功しました。
これにより、労災保険から障害補償年金を受給することに成功しました。
また、後遺障害の認定後は、勤務先の会社に対して、労災事故の損害賠償の交渉を行いました。
この労災事故は、事故現場の路面が凍結しているにもかかわらず、それを放置し続けた会社の安全配慮義務違反により発生していることを主張し、会社側と弁護士がだいりをして交渉を行いました。
会社側は当初は会社の責任を否定していましたが、数か月にわたる交渉の後、会社から解決金として2000万円の賠償金の提示がされました。ご依頼者と相談をしたところ、会社の賠償金の提示を受けることになり、最終的に労災保険から障害補償年金と会社から解決金として2000万円の賠償金を受けることに成功しました。
ご依頼者様からは、「右肩が治らず、私生活も不便な事が多い中、これからも頑張っていこうと思えるようになった」と大変嬉しい感謝のお言葉とお手紙をいただきました。
障害(補償)給付の申請には、医学的知見を踏まえた立証活動が必要不可欠です。
見落としたことで適切な等級認定が得られなくなるなどということのないように、交通事故や労働災害で専門的に後遺障害を取り扱う弁護士法人アジア総合法律事務所まで、ぜひご相談ください。